『The Last of Us』が暗い痛い鬱だけどすごい

 私は実はゲームウォッチャー(ゲーマーではなくゲームをしているのを横から見ている)。

 家人がPS3のゲーム『The Last of Us』をやっています。これが本当に暗い暗い暗い。画面も暗いが話がほんまに暗いです。

 このゲームは『アンチャーテッド』で有名なゲーム会社が作成したゲームで、PS3のなかでは多分いろんな意味でぶっちぎりのハイレベルゲームです。



アンチャーテッド』は要するにインディ・ジョーンズ、宝探しでお気楽極楽スリル満点でハリウッドのアクションアドベンチャーを観ている感じの楽しいゲームです。しかし、『The Last Of Us』は暗い。

The Last Of Us』は、バイオハザードメタルギアアンチャーテッドを混ぜてリアルにして暗くしたような感じなので、はたから観ていてあまり楽しくありません。いままでこんなにみていて楽しくない、鬱になるゲームは初めてです。

 でもすごいすばらしいゲームです。ゲーマーじゃないのでゲームとしての良さはあまりわかりませんが、本当に良くできていて、鬱鬱だけどアカデミー賞でノミネートされそうな感じです。

 主人公はおっさん(4、50代)と、物語の鍵を握るめちゃくちゃ口の悪い少女。二人が荒廃した世界を淡々と旅をします。『アンチャーテッド』もそうなのですが、ストーリーや設定は「ないない、そこ絶対もう落ちてる!」というツッコミ満載なのに、すごいリアルなのです。空気感とか質感とか。『The Last of Us』では、そのリアルさがすごくて、ご都合主義的展開とかないので、それで「淡々」としている感じがします。簡単に物語が展開しないのです。

 痛い。鬱になる。うつ…。

 あ、そういえば、血とかぐっちょんぱなわりに、きしょさとか痛さは物語の痛々しさほどはないっすね。

 極限状態の人間、アンチャーテッドのような脳天気さをとっぱらって、設定した物語の世界において、人間がどう動くかを突き詰めてリアルに追い求めると、ああなるのかなぁと。

 ゲームウォッチャーになって初めての感動は、メタルギア・ソリッドシリーズです。はぁこんな世界があるのかと、非常に驚きました。これは映画ですがオペラに近いです。音楽、キャラクタ、物語、奥深さ、豪華さ、費用面でも、お金のかかる総合芸術オペラだと思います。オペラと同様に、「なかなか観られない」という欠点があります。だってゲームができないと物語を見ることができないんですよ。なんてこったい。もったいない。でも、ゲームだからこそ、これを味わうことができるのです。

The Last Of Us』は、先人達の素晴らしいゲームへのリスペクトと、自分たちのこれまで作り上げたものに対する自信を、感じております。ほんとに鬱展開の物語なのですが、こういう素晴らしいゲームがあると、据え置きゲームの未来はもう少しなんとかなるのかな、とか思います。ゲーム業界も予算がふくらんで云々という話があり、飽和してきたハリウッド大作とちょっと似てきた状態にあるやもですが、まぁいつか瓦解するかもしれなくても、それまでは極みをきわめてみて欲しいです。