10年のお祭り騒ぎのその前に

 もうすぐ最強男声ボーカル実は踊るよデュオCHEMISTRYは10周年だぜイヤホーーイ!!!



 同じ日は、とある友人が早すぎる死をむかえた日でもある。まったく予告なしのいきなりの知らせだったので、当然しばらく恐ろしい喪失感があったのだが、3年、5年、と時間がたつにつれて、徐々にいろんなものがうすらいでいく。

 でも、10年とかキリの良い数字がきて、自分が三十代も後半になってしまうと、25歳という若さで逝ったということが、しだいに別の意味や重みを増してくるようになってきた。本当に、若いのだ、25歳って。

 彼はものすごい老け顔でw、二十代っていっても、え? て感じぐらいだったが、さすがに10年も自分が年をとってしまうと、記憶の中の彼はやはり若い。永遠に時をとめたその姿を思い出すと、きゅっと胸の奥が固まるような感覚になる。


 10年
 25歳


 手の中のものがもろく崩れて、さらさらと無くなって、手持ちぶさたになるような感じもする。


 時間がたったら記憶は薄らいでいくばかりで、いつかいろんな思い出といっしょに忘れてしまうんじゃないかと思っていたが、そんなことはないんだね。
 日差しは春なのに刺すような真冬の風がふくとき、なぜか今回はマッキーとCHEMISTRYがうたった『林檎の花』がトリガーになって、何度も何度も彼のことを思い出して目の奥がぐっとつまる。恋の歌だけど、未来や人への愛情が育っていくことを歌っているような歌なので、たくさんの人たちに囲まれて、緩やかにその中心にいた彼のことを思い出してしまう。


 10年。CHEMISTRYの歌を聴いてきた。CHEMISTRYは歌い続けてくれた。私は10年生きてきた。彼が軽蔑するようなバカな人間になっていないか、心配になることは多々あるけれど、以前ほど投げやりではないと思う。