創作

『好きなアイスは?』

行きつけのバーがある。どれくらいの頻度で何度その場所を訪れたら「行きつけ」と言えるのか、その言葉を知った頃くらいから、塩梅がわからないけれど、それはチェーン店の店だけれど、行きつけといっていいだろう。なぜなら店員が顔を覚えるからだ。顔を覚…

『好きなアイス』

「近所のまいばすけっとに、ブルーシールが売ってたんだよ」 何をトリガーに思い出したのか、唐突に翔太はいった。パカっとひらいたような笑顔だ。今日のビールは三杯目だが。暑い日で外の席で、すぐぬるくなるからと、ぐいぐい飲んでいた。かなりいいかんじ…

『おすすめの手土産』

今週のお題「おすすめの手土産」 『ねぇ、だからさ、何がいいと思う、手土産』 スマートフォンごしに愚痴をひとくさり連ねたあとで、麻衣子は思い出したようにそういった。 『きいてる?、千紗きいてる?』 「きいてる」 千紗はパソコンでイラストを描いてい…

『ここまでは寒くここからはあつい』

からだの半分が寒く、からだの半分があつく。変な具合になって目が覚める。一人の同じからだなのに、上と下でこうもちがう。つやっぽい話ではない。寝られないのでクーラーをつける。冷たい風がふれると、からだがこわばって、タオルケットをずりあげる。だ…

『シロというネコ』

全身真っ白なので「シロ」という名前のネコは、まれに見る凶暴凶悪な猫だった。一緒に住んでいる家族にはなついているようだが、その家に頻繁に出入りする、近所や親戚など、ありとあらゆる人間を、眼光鋭くにらみつけ、もし心地よくなでてもらったとしても…

書き終えること、書き続けることの困難さ

第一ハードルがまったくクリアできない。一枚も絵を描ききっていない絵描きみたいなものだ。一つの「完」もない。 最後に書き上げたのはいつだろうか、もう思い出せないくらい前。小説家になりたいとか、そんな寝言をいう以前のところに、ずっと居る。 遠く…

『ボタンの店』

店中びっしりボタンが並んでいる。小さな狭い店のなかで、祖母はお店のおばさんと、しばし世間話をする。 店の壁は引き出しで埋められて、天井までの隙間には、ボタンの箱が並んでいる。様々な色、形、きらきら。ただし全部ボタン、いま思えば、カラフルポッ…

書くエネルギー

やはり書くエネルギーをたいしてもっていないようで、ブログを書いたら他のものが書きにくくなるなぁと分かった。短い文を毎日書きつつ、などと思ったけど。いやしかし、筋トレのつもりなら、そこをがんばるべきだろうか。

『インディペンデンス』

夢いっぱいの未来に包まれるような多幸感と、やり残したこと、できなかったことへの焦り、諦め、伝えられなかった喉元につまるだけのコトバの原石。 いまでも思い出すと、ぐっと詰まるような錯覚をおこす。 「ちょっと、何やってるの!」 「え、えと…」 「ほ…