冬と夏のそうじき

 東京の真夏は、三十五度を超える日も珍しくないので、掃除機をかけるのは大変である。エアコンで冷やしていても、あっという間に汗だくになり、ぽたぽた落ちてくる。危険を感じて、あわてて水を飲む。
 それに対して冬は良い。もちろん、冷たい風をいれる勇気はいるけれど、真夏の汗だくにくらべたら、ずいぶん楽だ。厚着で掃除機をかけていたら、からだも少しあたたまる。
 広い家のひとは、どうするんだろう。掃除機をかけながら、熱中症になりそうだし、掃除機をかけているあいだに、部屋の空気がキンキンに冷えそうだ。
 北国の人は、どうやって掃除機をかけているのだろうかと、ふと思った。雪がごんごん降るあいだは、窓なんて開けられない、掃除機もかけられないのだろうか。幼い頃は九州で、十代後半から、ずっと東京に住んでいる。関東以北に縁が薄い。親戚が北陸にいるが、訪れるのはたいてい夏だった。冬に行ったこともあるけれど、子供だったので、掃除機のことなんか覚えていない。
 掃除機をかけながら、季節に思いを巡らすことができるようになったのは、つい最近のことだ。